2026年長野県公立高校入試倍率の注目点 ―進学校の定員割れと志願者ゼロの学科―

高校実績・動向分析

2026年度の長野県公立高校後期選抜の志願倍率が発表されました。

令和8年度公立高等学校入学者後期選抜志願者数②

受験倍率は全体で0.88倍と過去20年で最低を記録し、定員割れの高校が多数見られる結果となりました。
その要因のひとつとして、高校授業料無償化の影響で私立高校の志願者が増えたことも指摘されています。
そのような背景も踏まえつつ今回の倍率を細かく見ていくと、いくつか興味深い変化が見えてきました。

特に私が注目したのは次の点です。

  • 地域トップの進学校でも定員割れ

  • 松本美須々ヶ丘が大幅定員割れ

  • 中山間地域の高校の極めて低い倍率

高校入試の倍率は毎年変動するものですので、単年の結果だけで大きな変化を断定することはできません。
それでも今回の結果には、長野県の高校における変化を示唆する材料がいくつも含まれているように思われます。

今回はその中でも特に気になった点を取り上げてみたいと思います。


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地域トップの進学校でも定員割れ

今回の入試では、各地域のトップ校とされる進学校でも定員割れが見られた点が注目されます。

屋代高校

屋代高校は普通科・理数科ともに定員割れとなりました。

屋代高校は普通科と理数科を設置する進学校で、普通科には併設中学校から進学する中高一貫の内進生も在籍しています。
理数科は1クラス募集で母数が少ないというのもありますが、例年倍率が高く、理数系志向の受験生が集まる人気学科として知られてきました。

しかし今年は募集12人に対して志願者11人と、わずか1人ではあるものの定員割れとなりました。
人数としては小さな変化ですが、これまでの状況を考えると象徴的な出来事と言えます。

さらに今年は普通科も定員を割れています。
普通科の定員割れはこれが初めてではありませんが、屋代高校の場合は複数の学科を持つため、理数科で不合格となった受験生が普通科で合格し、結果として定員が充足するケースもありました。
今回は普通科・理数科ともに定員を割れる結果となった点は注目されます。

上田高校

上田高校も定員をわずかに下回る結果となりました。

上田高校は交通アクセスの良さから東信の広い範囲から受験生を集めてきた学校であり、これまで安定して志願者を確保してきた屈指の進学校です。

わずかの人数ではあるものの、定員割れは驚くべき結果と言えるでしょう。

諏訪清陵高校

諏訪清陵高校も定員割れとなりました。

諏訪清陵は諏訪地域のトップ校として知られる進学校で、屋代高校と同様に中高一貫を併設しています。
今回この両校がいずれも高校募集で定員割れとなっている点も興味深いところです。

単年の結果だけで結論を出すことはできませんが、中高一貫校において高校からの入学を控える傾向が受験生の中で表れている可能性もあるのかもしれません。

今後の倍率の推移を見ながら、この傾向が続くのかどうかを見ていく必要がありそうです。


松本美須々ヶ丘が大幅定員割れ

今回もう一つ注目されたのが、松本美須々ヶ丘高校の定員割れです。

松本地区にはいわゆる「松本四校」と呼ばれる高校群があります。松本近郊の中学生にとって代表的な進学先として知られており、例年いずれの学校も高い倍率となる人気校です。

  • 松本深志高校
  • 松本県ケ丘高校
  • 松本蟻ヶ崎高校
  • 松本美須々ヶ丘高校

しかし今回、松本美須々ヶ丘は定員280人に対して志願者240人と、40人不足という結果になりました。

松本地区はむしろ周辺地域からの進学集中が起きている地域です。
その中で松本四校の一角が定員を大きく割ったという点は、やや意外な結果と言えるでしょう。

一方で松本蟻ヶ崎高校は定員280人に対して志願者355人と、75人も超過しました。
この結果を見ると、松本4校の中でも志願者が特定の学校に集中している可能性があるのかもしれません。


中山間地域の高校の極めて低い倍率

中山間地域の高校では、本項で紹介する次の3校において、志願者ゼロを含む極めて低い倍率となった学科が見られました。都市部への進学集中の傾向が顕著に表れた結果とも言えるでしょう。

これは中山間地域の高校における大きな課題のひとつです。以前の記事でも木曽青峰高校の例を取り上げています。

過去記事:木曽青峰高校の定員割れに見る構造的課題──中山間地域の名門校はいま

木曽青峰高校

木曽青峰高校は普通科、森林環境科、インテリア科、理数科の4学科構成ですが、
この内、森林環境科が18人募集、理数科が23人募集に対し、志願者はゼロとなりました。

残りの普通科・インテリア科においても定員が割れています。

木曽地域は人口規模が小さい地域という事情もありますが、それでも志願者ゼロ、しかも複数の学科でという結果は強いインパクトがあり、現状を象徴する結果と言えるかもしれません。

大町岳陽高校

大町岳陽高校は普通科と学究科の2学科構成ですが、学究科は31人募集に対し、志願者はゼロとなりました。

普通科は定員割れこそしているものの、0.86倍と一定の志願者を集めているのに対し、学究科の志願者が0人という結果は対照的で、驚くべきものです。学究科は大北地域の中堅~上位の学力層の進学先として設置された学科と思われますが、実態としては進学先に選ばれるのは限定的で、相当数が松本に流出していると考えられます。

飯山高校

飯山高校は志願者数ゼロの学科はなかったものの、探究科が44人募集のところ志願者は8人で、厳しい志願倍率となりました。普通科では一定数の志願者がいる一方で、探究科の志願者が極端に少ない結果は、大町岳陽と同様の傾向であり、飯山近郊の中堅~上位の学力層の相当数が長野市内の高校に流出しているものと考えられます。

今回の結果は、中山間地域の高校が直面している現実を象徴するものとも言えるかもしれません。


まとめ:単年の結果だけで判断はできないが…

入試倍率は毎年変動するので、今回の結果だけで高校地図の変化を断定することはできません。

しかし今回の結果を見ると

  • 県内屈指の進学校の定員割れ
  • 松本4校の変化
  • 志願者ゼロの学科

など、いくつかの興味深い材料が見えてきたことも確かです。

これらの動きが一時的なものなのか、それとも構造的な変化の兆しなのか。
今後数年間の倍率推移を見ながら考えていきたいところです。

今回の倍率結果の背景には、人口減少だけでなく制度の変化も影響している可能性があります。
私立高校授業料無償化による私立志向の高まりや、中高一貫校の存在など、制度の変化が高校の志願動向に影響を与えている可能性も考えられます。

長野県の高校構造は、人口動態だけでなく、こうした制度の変化によっても少しずつ姿を変えていくのかもしれません。

【出典】長野県教育委員会
「令和8年度公立高等学校入学者後期選抜志願者数②(志望変更受付締切後の集計結果)についてお知らせします」 https://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/koko/saiyo-nyuushi/shiken/ko/r8/documents/20260305web-teisei.pdf

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