大町市では、美麻・八坂地区を除く旧市地区において、北小・西小・東小・南小の4校体制で小学校を運営してきましたが、令和7年度(2025年度)からは2校への統合が決定しています。
新しい校名は「大町北部小学校」と「大町南部小学校」。
地域住民や保護者の思いが交錯する中での統合ではありますが、このような判断を市が早期に下したことには、注目すべき背景があります。
学校統合は、全国の中山間地域で共通する大きな課題です。しかし、実際には住民の理解を得るまでに時間がかかり、なかなか実現できないケースも少なくありません。
そうした中で、大町市は中学校統合、小学校統合ともに県内でも比較的早い段階で取り組んできた自治体です。
今回は、大町市の取り組みを飯山市と比較しながら、なぜ大町市は早期に統合を進められたのかを考えてみたいと思います。
大町市と飯山市:人口・地理構成の共通点
大町市と飯山市は、県内でも共通点の多い自治体です。
いずれも長野県の中山間地域に位置し、人口減少や少子化といった共通の課題に直面しています。
- 大町市(約2.4万人)
- 飯山市(約1.8万人)
※人口は2025年現在
人口規模で見れば、飯山市の方がやや小さいにもかかわらず、これまでの学校設置状況を比較すると、大町市のほうが統合への動きが早かったことが分かります。
中学校の統合:タイミングの違い
飯山市の中学校は、かつては一中・二中・三中の3校体制でしたが、少子化による生徒数の減少を受け、平成22年(2010年)に城北中学校と城南中学校の2校へと再編されました。
地理的条件によっては、学校を維持せざるを得ないケースもあります。しかし、飯山市の場合、一中と二中はいずれも市中心部にあり、地理的にも近接していたことから、単なる距離の問題では説明がつかず、本当に3校必要だったのかは疑問が残ります。この点からも、「大町市の判断の早さ」が際立って見えてきます。
小学校も同様に「先手」を打った大町市
昭和29年、大町市は北安曇郡の大町・平村・社村・常盤村の4町村が合併して発足し、それぞれの旧町村には1校ずつ小学校が設置されていました。
しかし、昭和後期になると市中心部の大町小学校が過密状態となり、児童を分散させるために北・西・東・南の各小学校へと再編されたのです。これは、中心校の大規模化と周辺校の小規模化という状況を踏まえ、市全体で学校規模の平準化を図った合理的な再編であり、個人的にも非常に好ましい施策だと感じています。
その後、4校体制はしばらく続きましたが、少子高齢化の影響で児童数は徐々に減少していきました。とはいえ、各校の児童数が統廃合を余儀なくされるほど極端に少なくなったわけではありませんでした。それでも大町市は早期に判断を下し、4校から2校への再編に踏み切ったのです。
年度 | 平地区 | 大町地区 | 社地区 | 常盤地区 |
---|---|---|---|---|
~昭和51年 | 平小学校 | 大町小学校 | 社小学校 | 常盤小学校 |
昭和52年~ | 大町北小学校 | 大町小学校 大町北小学校 |
社小学校 | 常盤小学校 |
昭和56年~ | 大町北小学校 | 大町小学校 大町北小学校 大町東小学校 |
大町東小学校 | 常盤小学校 |
昭和59年~ | 大町北小学校 | 大町西小学校 大町北小学校 大町東小学校 |
大町東小学校 | 常盤小学校 |
昭和62年~ | 大町北小学校 | 大町西小学校 大町北小学校 大町東小学校 |
大町東小学校 | 大町南小学校 |
令和8年~ | 大町北部小学校 | 大町北部小学校 | 大町南部小学校 | 大町南部小学校 |
一方の飯山市では、近年ようやく小学校の統合が進み始めた印象で、全体的には大町市に比べて対応が一歩遅れているように見えます。
なぜ大町市は判断が早かったのか?
学校統合には、通学距離の問題や地域の拠点喪失といったデメリットもあり、住民の理解を得るのは容易ではありません。それでも大町市が比較的スムーズに統合を進められた背景には、いくつかの要因があると考えられます。
- 将来を見据えた人口推計を踏まえた判断
現在の在籍数では一見まだ維持できるように見えても、今後10年先を見据えて早めに準備を進めた可能性があります。 - 行政と教育委員会の連携
統合の必要性を正確に共有し、段階的な合意形成を進めた点が大きいと考えられます。 - 住民説明や情報公開の丁寧さ
納得を得るまで何度も説明を重ねたことで、反対を最小限に抑えられたのではないでしょうか。
まとめ
学校の統廃合は、地域にとって非常にデリケートな問題です。それでも避けられない現実である以上、「いつ」「どう進めるか」が、自治体にとっての大きな判断となります。
大町市のように、将来を見据えて早めに準備を進め、地域と対話しながら実行に移していく姿勢は、同様の課題を抱える他の市町村にとっても一つのモデルになるのではないでしょうか。
引き続き、県内の他自治体の動きにも注目しながら、子どもたちにとってよりよい教育環境を考えていきたいと思います。
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