麻績村と筑北村の小中学校事情 ー不自然な合併がもたらした影響

小学校編

長野県東筑摩郡の北部には、かつて麻績村、坂井村、坂北村、本城村の4つの村が存在していました。しかし、平成の大合併により、坂井村・坂北村・本城村の3村が合併して筑北村が誕生した一方、麻績村は合併せず独立を選択しました。この自治体合併の方針は、地域の小中学校の編成にも大きな影響を及ぼしました。

自治体の変遷
地区 ~2005年10月 2005年10月~
麻績 麻績村 麻績村
坂井 坂井村 筑北村
坂北 坂北村 筑北村
本城 本城村 筑北村

小学校の統廃合と筑北村の地理的課題

合併前の4村時代、小学校は各村に1校ずつ、中学校は2村で1校を組合立で運営していました。しかし、少子化の進行に伴い、筑北村では2015年に坂北小学校と本城小学校が統合し「筑北小学校(旧)」が誕生。その5年後の2020年には坂井小学校も統合され、新たに「筑北小学校(新)」が設立されました。

ただし、この統合には課題がありました。筑北村は坂井・坂北・本城の3村が合併したことで、ちょうど麻績村を挟む形となり、坂井地区と坂北・本城地区が分断されるような地理的構造になってしまったのです。
そのため、坂井小学校の統合が遅れたのも、交通アクセスの問題によりスムーズに進まなかったことが一因と考えられます。

小学校の変遷
地区 ~2015年4月 2015年4月~ 2020年4月~
麻績 麻績小 麻績小 麻績小
坂井 坂井小 坂井小 筑北小(新)
坂北 坂北小 筑北小(旧) 筑北小(新)
本城 本城小 筑北小(旧) 筑北小(新)

中学校の通学区変更と組合立解消

中学校については、地理的な関係から麻績村と坂井村の生徒が筑北中学校、坂北村と本城村の生徒が聖南中学校に通う形をとっていました。筑北村の誕生後もこの体制はしばらく維持されましたが、2020年に筑北中学校の組合立が解消され、坂井地区の生徒は聖南中学校へ通うことになりました。

この変更により、坂井地区の生徒は、地理的に近い筑北中学校ではなく、麻績村を経由して遠方の聖南中学校に通うという不自然な状況が生じました。結果として、地域の学校再編は極めて複雑なものとなり、住民にとっての負担が増すことになったのです。

中学校の変遷

地区 ~2020年4月 2020年4月~
麻績 筑北中 筑北中
坂井 筑北中 聖南中
坂北 聖南中 聖南中
本城 聖南中 聖南中

麻績村が独立を選択した理由

当初は、この地域の合併協議は4村が統合する方向で進められていました。しかし、麻績村は合併協議から離脱し、独立の道を選んだのです。その理由として、

  • 他の3村に比べて人口が多かったこと
  • 聖高原といった観光資源を有しており、財政的に比較的安定していたこと

が挙げられます。加えて、新しい自治体名の候補として麻績村が推していた「聖町」が採用されなかったことも、離脱の一因とされています。ちなみに、長野県では「町」に昇格するために8,000人以上の人口が必要とされており、麻績村が離脱した結果、残る3村ではその要件を満たせず「筑北村」として発足することになりました。

「筑北小」と「筑北中」 ー 名称の混乱

学校再編の影響で、現在「筑北小学校」と「筑北中学校」という同じ名称を冠した小中学校が存在していますが、筑北小は筑北村の、筑北中は麻績村の学校です。つまり、「筑北小から筑北中に進学する」というケースは通常ではあり得ないという、極めて紛らわしい状態になっています。

また、筑北小学校は旧坂井小学校の立地に建てられたため、坂北・本城地区の児童は麻績村を経由しての通学となりました。同様に、聖南中学校は本城地区にあるため、坂井地区の生徒は麻績村の筑北中学校の近くを通過して遠方の聖南中学校に通うことになりました。

合併の失敗が生んだ混乱

こうした学校再編の混乱は、自治体合併のあり方に起因しています。本来、この地域は地理的関係を考えると4村で合併すべきでした。しかし、麻績村が独立を選択した結果、筑北村の構成は歪なものとなり、教育環境にも少なからず影響を及ぼしました。

麻績村が地域の中心としてやや優位な立場にあったため、対等合併の名目のもとでうまく調整が進められなかったのかもしれません。もし4村で合併が実現していれば、より合理的な行政区画や学校配置が可能だったのではないでしょうか。

まとめ

麻績村と筑北村の小中学校再編の経緯を振り返ると、自治体合併の影響が色濃く反映されていることがわかります。合併の際の調整がうまくいかず、飛び地のような村の形状が生まれたことで、

  • 小中学校の不自然な通学区変更が生じ住民に不便をもたらしたこと
  • 学校名が混乱を招く結果となったこと

など、教育環境にさまざまな問題が生じました。

自治体の合併は、行政の効率化や財政の安定を目的としたものですが、その過程で住民の生活や教育環境が犠牲になってしまうケースもあるのが現実です。今回の事例は、自治体合併の成功と失敗が教育にも影響を与えることを示す、ひとつの典型的な例といえるでしょう。

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