北信地区では、新たな学びの場として「スーパーフレックス新校」の設置が進められています。その候補校として選ばれたのが、長野東高校です。
しかし、スーパーフレックス新校の理念や目的を踏まえると、長野東高校の選定には疑問が残ります。
本記事では、長野東高校が選定された背景の推察、スーパーフレックス新校としての適性や課題を見つめ直し、より良い方向を模索します。
スーパーフレックス校とは何か?
長野県教育委員会は、少子化や多様な学びのニーズに対応するため、「スーパーフレックス新校」という新たな高校の形を提示しています。
これは、昼夜を問わず生徒が自由な時間帯で学べるようにする「多部制・単位制高校」で、いわば従来の全日制・定時制・通信制の枠を越えた柔軟な学びの場とされています。
長野県内ではすでに、松本筑摩高校、東御清翔高校、箕輪進修高校が多部制・単位制高校として存在していますが、北信地区にはこれまで存在していませんでした。
その北信地区において、「長野東高校をスーパーフレックス新校に再編する」という方針が打ち出されています。
しかしこの方針には、理念と現実の間に大きなねじれがあるのではないか?と感じています。
なぜ長野東高校が選ばれたのか?
長野東高校は長野市大豆島(まめじま)地区にあり、長野駅からは直通のバスを使っても20〜30分ほど。バスの本数は多くありません。
長野電鉄やしなの鉄道、JRの各路線からも大きく離れており、どの鉄道駅からも徒歩通学は困難です。
つまり「アクセスが非常に悪い」というのが率直な印象です。
では、こうした立地にある高校が、なぜ「学び直し」や「夜間の自由な学習時間帯」などを重視するスーパーフレックス校に選ばれたのでしょうか?
本当に学びの多様化を意識した選定なのか?
スーパーフレックス校は、従来の全日制や定時制とは異なる、新しい学びの形を実現する取り組みです。
そのためには、以下のような環境整備が求められるはずです:
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昼夜を問わず通学可能な交通利便性
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安全な夜間通学を可能にするインフラ整備
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幅広い年齢層にとっての通いやすさ
これらを前提に考えたとき、長野東高校の立地は少し悩ましい部分があると感じます。
長野東高校が選定された背景の推察
このような選定に至った背景には、教育行政における「調整の難しさ」が垣間見えるように思われます。
長野・長野西・長野吉田といった長野市内の伝統的な普通科高校は、強いブランドイメージや同窓会の影響力を持っており、「スーパーフレックス新校」への転換には定時制のイメージも重なり、大きな抵抗があったと予想されます。
そうした中で、1974年設立と比較的新しく、地元でも柔軟に対応できると見なされた長野東高校が、調整のしやすい選択肢として浮上したと考えられます。その結果、条件面では必ずしも最適とは言えなかったものの、他に有力な候補校がなかったため、長野東高校がそのまま選定された可能性が高いでしょう。
これは、「学びの多様化」という理念よりも、政治的な波風を立てないことが優先されたように見えてしまいます。
本当にふさわしい立地とは?
本来、スーパーフレックス高校のような柔軟な学びを実現する場には、少なくとも鉄道駅から徒歩圏内で通学できる場所がよりふさわしいです。
とくに社会人や中途退学者が「学び直し」を志すとき、アクセスの悪さは致命的です。どれほど素晴らしい教育内容があっても、通えなければ意味がありません。
理念を形骸化させないために
スーパーフレックス高校という制度そのものは、多様性を尊重し、これまでの画一的な高校制度を乗り越える可能性を持つ取り組みだと思います。
しかし、理念を実現するには、その立地や対象層への配慮が何よりも重要です。
単なる定時制・通信制の焼き直しではなく、「誰でも通いやすい・学びやすい環境」をどう整備するのか。
この原点に立ち返る必要があるのではないでしょうか。
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