屋代・上田・諏訪清陵の進学実績を6年分で比較|長野県3位争いの行方

地域別の学校研究

長野県の進学校といえば、長野高校と松本深志高校が2トップで、ここに異論はほとんど出ないと思う。

問題はその次である。

直近2年(2025年/2026年)の実績を別記事でまとめているが、それを考慮すると次点となるのは

・屋代
・上田
・諏訪清陵

この3校が有力候補として挙げられる。

この記事では2021年から2026年までの6年分を通算し、屋代・上田・諏訪清陵の3校を複数の角度から比較してみたい。結論を先に言えば、3位は決まらない。ただしそれは、データが足りないからではない。どの物差しを使うかで、答えが変わるからである。

使用する指標

  • 難関国立10大学 … 北海道・東北・東京・名古屋・京都・大阪・九州の旧帝大7校に、一橋・東京科学・神戸を加えた10校
  • 東京一科 … 東大・京大・一橋・東京科学。難関国立10大学の内側にある最上位帯を、別途取り出したもの
  • 国公立医学科
  • 早慶上理 … 早稲田・慶應・上智・東京理科。延べ合格者数のため、併願を積極的に行う学校ほど数字が膨らむ点には留意されたい

その前に ── 上位2校との距離

3校の話に入る前に、なぜ「3位争い」という枠組みになるのかを確認しておく。

難関国立10大学合格者数/率(2021~2026年

卒業生計(6年)合格者数合格率
長野1,65432119.4%
松本深志1,85629515.9%
屋代1,6371358.2%
上田1,8921467.7%
諏訪清陵1,3761027.4%

深志15.9%と屋代8.2%の間に7.7ポイントの断絶がある。一方、下位3校の内部(8.2%〜7.4%)の幅は0.8ポイントにとどまる。階層間の差が、階層内のばらつきの8倍以上という構図である。

東京一科の率でも同じ形が出る。深志3.7%に対し、3校は2.3%〜1.7%。

長野・深志の2校については、6年通算でも順位が動く余地はほとんどない。議論になるのは、その下の3校である。


物差し① 実数 ── 何人送り出したか

まず、最も一般的な見方から。合格者の実数である。

3校の合格者実数比較(2021~2026年

難関国立10大東京一科国公立医学科早慶上理
屋代1353836193
上田14632非公表236
諏訪清陵1023140169

上田が難関国立10大学と早慶上理で首位に立つ。特に早慶上理は236対193で、屋代に43の差をつけている。東京一科のみ屋代が38で上回る。

諏訪清陵は国公立医学科で40と最多。難関国立10大学の102は上田より44少なく、他の指標では3校で最も少ない。

実数だけを見れば、上田がやや前に出て、屋代が続き、諏訪清陵が離されるという順序になる。


物差し② 率 ── 母数を揃えて見る

ところが、卒業生数で割ると景色が変わる。

3校の6年間の卒業生数には、無視できない差がある。上田1,892名に対し、諏訪清陵1,376名。その差は516名、率にして37%。同じ100名の合格者でも、母数が4割近く違えば意味は変わる。

3校の合格率比較(2021~2026年

難関国立10大東京一科国公立医学科早慶上理
屋代8.2%2.3%2.2%11.8%
上田7.7%1.7%非公表12.5%
諏訪清陵7.4%2.3%2.9%12.3%

屋代は難関国立10大学で8.2%と首位に立ち、東京一科でも2.3%で諏訪清陵と並ぶ。早慶上理は11.8%で3校最下位である。

上田は難関国立10大学で7.7%と諏訪清陵の7.4%を上回るが、実数で44あった差はほぼ消える。東京一科は1.7%で3校最下位、早慶上理は12.5%で首位となる。

諏訪清陵は、実数で最も少なかった学校が率では上位に並ぶ。 東京一科2.3%は屋代と同率で首位、国公立医学科2.9%は3校で最も高い。難関国立10大学の7.4%も、実数では上田と44の差があったが、率では0.3ポイント差である。卒業生1,376名という5校最少の規模で、この水準に達している。

合格率で見ると、この3校に大差は無いように見える。


物差し③ 現役率 ── 3年間で仕上がったか

合格者数には現役も既卒も含まれる。同じ30名でも、現役25名と現役10名では、高校3年間の成果としての意味が違う。

各校が公表している現役数から、6年通算の現役率を算出した。

3校の現役率比較(2021~2026年

東京一科難関国立10大国公立医学科早慶上理
屋代78.9%83.0%58.3%75.6%
上田46.9%71.2%非公表58.5%
諏訪清陵83.9%81.4%47.5%74.6%
(長野)64.7%71.7%58.8%62.8%
(松本深志)72.1%73.9%48.0%59.7%

ここで、これまでとは別の構図が現れる。

屋代と諏訪清陵は、最上位帯でも水準が落ちない。難関国立10大学の現役率は屋代83.0%、諏訪清陵81.4%だが、そのうち東京一科に限っても屋代78.9%、諏訪清陵83.9%である。

上田は難関国立10大学が71.2%だが、東京一科に限ると46.9%となる。5校のなかで唯一50%を下回っており、合格32名のうち現役は15名である。

もうひとつ注目すべきは、難関国立10大学の現役率で屋代83.0%・諏訪清陵81.4%が、長野71.7%・松本深志73.9%を上回っていることである。実績の絶対量では大きく引き離されている2校が、現役という条件では上位2校を超える。屋代と諏訪清陵はいずれも併設中学を持つ中高一貫校であり、中入生による6年間のカリキュラムが現役合格を引き上げている可能性は考えられる。


で、結局3位は誰なのか

3つの物差しを並べる。

物差し順序
合格者実数上田 > 屋代 > 諏訪清陵
合格率屋代 ≒ 上田 ≒ 諏訪清陵
現役率屋代 ≒ 諏訪清陵 > 上田

3つの見方で、結果が3通りに分かれた。 実数では上田が前に出て、率では3校が横並びになり、現役率では上田が下がる。合格率のなかでも、難関国立10大学と早慶上理では上田、東京一科と医学科では諏訪清陵と割れている。

実数は「その学校が毎年何人の難関大進学者を地域に送り出しているか」という供給量を測る。地域社会への寄与としては、この見方に意味がある。一方、率は「生徒一人あたりどれだけ到達しているか」を測る。学校の教育としての密度を見るなら、こちらになる。現役率は「高校3年間で仕上がったか」を測る。

優劣ではなく、質問が違う。 だから答えも違う。


3校の性格

順位よりも、それぞれの輪郭を描いたほうが実態に近いと思う。

屋代 ── 現役完結型

全指標で現役率が高く、難関国立10大学83.0%は5校中最高。実数では上田に次ぐ位置だが、卒業生1,637名という規模を考えれば効率は高い。浪人に頼らずこの水準を出していることが、この学校の最大の特徴である。併設中学を持つ中高一貫校でもある。

上田 ── 広域大規模型

卒業生1,892名は5校中最多。難関国立10大学146名、早慶上理236名という供給量は3校で最大であり、地域に送り出している人数という意味では最も大きい。率で不利になるのは母数の大きさによる面がある。国公立医学科が非公表のため、率の評価には不確実性が残ることも付記しておきたい。

諏訪清陵 ── 小規模高効率型

卒業生1,376名は5校で最少。実数では見劣りするが、率にすると並んでくる。東京一科の現役率83.9%は5校最高で、合格31名のうち26名が現役という高水準である。国公立医学科40名(率2.9%)も3校で最多。進学先では名古屋大30名が最多で、中京圏との結びつきが他の2校より強い。こちらも併設中学を持つ。


おわりに

3位を決めようとして、決まらなかった。ただ、決まらない理由が分かったことには意味があると思う。

単年の合格者数は、たまたまその年の学年に強い生徒がいたか、上位層が国公立本命だったか私大を併願したかといった事情で簡単に動く。屋代の東京一科は6年間で9→8→5→4→12→0と激しく推移している。0だった2026年も、難関国立10大学では22名と例年並みだった。年数名の指標を単年で見ることに、ほとんど意味はない。

そして6年分を集めてなお、順序は物差し次第で入れ替わる。それは分析が甘いからではなく、3校が実際に拮抗しているからである。

最後に、この記事が測っていないものについて。ここで扱ったのは難関大学への合格実績という、学校のごく一部の側面にすぎない。校風、部活動、地域での役割、生徒がその3年間をどう過ごしたか。数字に表れないものが、進路実績より小さいということはないはずである。

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